とても暖かく爽やかな風が僕の全身を包み込んだ。 目を閉じると淡い桃色が情景に浮かぶ。 とても透明感のある桃色。 僕は、いやおうなく全身の力が抜け落ちた。 とても、心地よい桃色の風が僕を支配している。 僕は、目を開けてみた、桃色の風は部屋を変えてしまっていた。 目に見える全てのものが淡い桃色になっている。 壁にしろ、机に置いてあった本にしても蛍光灯にしても全てが暖かく透明な桃色が光射していた。 無数の花束の中に身を置いているようだ。 そう、僕は、この部屋に帰る前、素敵な女性に出会った。 公園のベンチで僕は、本を読んでいた。公園のベンチで本を読むのは僕にとって、したたかな楽しみなんだ。 僕の行く公園は、ほとんど人が来なく、ひっそりとしている。 平日の午後が、一番いい時なんだ。木漏れ日の光が淡く差し込んできて、鳥達が素敵な音色を奏でている。 そんな中、本を読む。読むといってもただ、目を文字の上になぞらせるだけだけど。 すると、とても落ち着いた気分になれる。多分、脳波を計測するとアルファ派なんかが出ているのだろう。 僕が本を読んでいると爽やかな、甘い香りがそっと鼻に囁いた。僕は、本から目を逸らし顔をあげると、目の前に女性が居た。 その女性は、肩の下十センチ程の黒髪を片手で掻き揚げ片方の耳を出していた。耳からは小さなピアスが光り、とても色白で 透き通ったような肌と透き通ったような大きな丸い目が印象的だった。 僕と目が合うと女性は微笑み「何を読んでいらっしゃるのですか」と言った。 「花咲じいさんさ」 僕は、まじめに言った。 「あら、素敵な本ですこと」 「本当にそう思うのかい」 「ええ、とてもそう思います。だって、枯れ木に花を咲かせるのでしょう、とても素敵、この公園に合っているわ」 「それは、どうも」 「ねえ、横に座ってもいいかしら、それとも、誰かと待ち合わせをしているのですか」 僕は、少し驚いた。こんな人気のない公園にこんな素敵な女性が居るのと、僕みたいな無愛想な男の隣に座りたいという事 と、花咲じいさんを素敵な本とi言ったことに。 「構いませんよ、僕には待っている人なんて居ないから」 「ありがとう」 女性は僕の隣に座った。 とても、素敵な香りが僕を包み込んだ。 鳥たちの音色と、そよ風にのり、その女性は僕を魅了した。 僕は、悟られまいと前方を固く見据えていた。 「ねえ、素敵ですね。こう静かな公園で花咲じいさんを読むのも」 「ねえ、僕は花咲じいさんなんて読んでいないよ」 女性はにこりと微笑んだ。 「ねえ、何を読んでいるかなんてどうでもいいのです。ただ、貴方が花咲じいさんと言った事に私はとても興味をもったんです よ」 「そうですか」 僕は、それしか答えられなかった。 「ねえ、よろしかったら、この公園を二人で散歩しませんか」 「そちらが、よろしかったらお供しますよ」 「そんな、言い方なさらないで、私は、そんな言われ方がとても苦手なの」 女性は立ち上がった。僕も立ちあがり、肩を並べて公園の中を歩いた。 僕は、彼女に魅了され、空中を歩いている気分だった。 で、何かを話したような気がするが覚えていない。 ただ、覚えているのは、彼女の素敵な香りと素敵な声だけだった。 そよ風が僕の全身を透明な、甘い、爽やかな香りで包みこみ、彼女の声が素敵なメロディーとなっていた。 僕たちは、公園で別れた。 そして、僕は、部屋に帰った。 「ねえ、私に花を咲かせてくれたのは貴方なのよ」 「ねえ、僕の部屋を桃色に彩ってくれたのは君だよ」 透明な、甘い、爽やかな香りがぼくの鼻をそっとなで、僕の唇にそっと触れた。
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