(精神力だね) 「君、いったい何をしているんだい。」 「いや、精神力をつけようと思ってさ、すこし、気張ってみたのさ。」 「はあ、しかし、滑稽だよ、必勝の鉢巻なんて。熱でもあるのじゃあないかい。」 「何がそんなにおかしい、根性や気合を入れるには、必勝の鉢巻って決まっているだろう。これを、すると、なんだか、やる気が 沸くんだ。」 「ふーん。そんなもので気合を入れるとは、恐れ入ったよ。まあ、君がそれでやる気が出るのならそれは、それでいいさ。」 「そんなに、笑うなよ。気分が滅入るじゃあないか。」 「何も、鉢巻をとって、投げ捨てなくたっていいだろう。せっかく、君の達筆な字で書かれた物を。」 「そうかい、そんなに、僕の字は上手かい、我ながら良く書けたと思ったんだ。」 「君は、分かりやすい性格だな。」 「そんなことはない。自分でも自分が良く分からない。」 「少し、笑われたからといってすぐに落ち込むし、少し褒められたからといって、すぐ機嫌が良くなる。これって、分かりやすくない かい。」 「そうかな。でも、これは、気合を入れたせいだね。やはり、気合を入れると、なんだか、もの凄く、感じやすいんだ。何事にも真 剣にやらなければいけないっていうかさ。 無理をしてでも、やってやろうという前向きな姿勢がでてくるんだよね。これって、精神力だろ。」 「うーん、そんなような、そうでもないような気がするな。」 「いや、そうだ、そうに違いないよ。」 「まず、おいらの頭に浮かぶのは、精神力が強いというのは、何事にも動じない人を思い浮かべるな。何を言われても平気で冷 静さを保っているような人だね。」 「そう、言われればそのような気が。だけど、窮地に陥ったときに今まで以上の力を発揮できるようなのが精神力じゃあないの かい。」 「だから、おいらが言っているのは、窮地に陥ったときに、冷静さを欠かないで普段の力を存分に発揮できる事だよ。自分が持 っている以上の力なんて、出せやしないよ。」 「そうかな、火事場の馬鹿力なんてのがあるじゃあないか。やはり、これは精神力だね。人間の底知れぬ潜在能力さ。」 「確かに火事場の馬鹿力っていうのはあるね。でも、そもそも、その力はその人が本来もっている力なんだ。窮地に陥ったとき に力が発揮されるというのは、人間の安全弁が外されたことになるんだね。そもそも人は、普段の状態ではどんなに力を入れ たとしても百パーセントの力は出せない。何故かっていうと、体への負担があまりにも大きすぎるからなんだ。」 「ふーん。そうなのかい。でも、精神でその、百パーセントの力が出すことが出来るのだから、精神力を強くすれば力が発揮で きるということじゃあないのかい。」 「確かにそうなのだろうね。でも、どんなに頑張っても出来ないことは出来ないのだ。」 「頑張れば何事も出来るさ。何事も。」 「ふーん。ならば、君は、百メートル走を八秒で走ることが出来るのかい。」 「出来るわけないだろう。だいたい、百メートル走を八秒で走った人類は居ないんだ。可笑しなこと言わないでくれ。」 「ほら、どんなに頑張っても出来ない。」 「君ね。僕は、頑張る事に意義があるという事を言ったんだよ。」 「それは、分かっている。頑張る事に意義があるかないかは、次にして、やはり、おいらは、精神力っていうのは、何事にも動じ ない事が大切だと思う。例えば、病気になったとする。ここで、駄目だと思うと良くなるものはよくならない。逆に早く治そそうと 焦って、無理に体を動かしたりしてしても、良くならない。病気は病気だと認識して、焦らず、落ち込まず、気長にやっていくのが 良いと思う。 長距離走でも、自分の力をわきまえ早くゴールに辿り着こうと焦らず、もう、走れないと弱気にならないで、自分のペースで走る のが良いと思う。」 「うーん。良くわからないな君の言っていることは。結局、何にも動じないと、病気は良くなる訳。長距離走は、早く走れるの。」 「えーと、おいらが言いたいのはね。くよくよしたり、焦ったり、するのは、良くないということだよ。」 「うーむ。何か良く分からないな。よーし、僕も何事にも動ぜずわが道を行くぞ。」 「君、その鉢巻はやめた方がいいよ。」 「君が何と言おうと、僕は何事にも動じない。」 「何事にも動じないのもあまり良くないのかな。」 「うん。いい気分だ。」 「程々がいいと言った方がいいかもしれないね。」
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