( 若いそれとも年寄り) 「やはりさ、年は、若い方が得だと思うよ。だってさ、若気の至りって言葉があるでしょう。若いうちは何をしても許されるっていう ような風習みたいなものがあるでしょう。」 「いやいや、若気の至りって若いうちに何をやっても許されるわけじゃあないさ。若いうちは買ってでも苦労をしろなんて言うでし ょう。」 「苦労しても、若いから何とでもなる。若いと、体力も気力もあるから何とでも出来るんだ。若いうちは、得だよ。」 「そうかな。苦労なんて、若くても年をとっていてもしたくないんじゃあないかな。年をとっていれば、それなりに、これをしてはい けない、これはしてもいい。なんて分別が出来て、無駄なく事を運ばせることが出来ると思うんだけど。」 「はー、君は年をとっていれば、無駄なく事を運ばせることが出来ると思っているのかい?」 「いや、全ての物事を無駄なく運ばせるなんて思っていないよ。ただ、若いときより、無駄がなく事を運ばせる事が出来ると思う んだけど。」 「でも、それは、年を取っているからじゃあなくて、経験が物をいうのでしょう。色々な経験があるから、無駄が無い。逆に、どれ だけ年をとっていたとしても、経験が無いものは、駄目だよね。例えば、八十過ぎの老人が、まったく、パソコンを使った事が無 いとする。その人が、パソコンを覚えようとする体力や気力があると思うのかい。」 「いや、いるかもしれない。だけど、そんな、パソコンなんて覚えようとしなくてもいいじゃあないか。パソコンを使わなくても充分 生活していけるんだしね。」 「でも、僕は、新しい事を覚えていかないと生活に取り残されていくと思うんだ。」 「新しいことを覚える事がどれだけ重要なんだい。おいらは、生活に必要なことさえ覚えていれば、充分だと思うけどね。」 「新しい事、例えば、もう、年末だから年賀状を作るとするじゃあないか、パソコンでチヨチョイのちょい、と斬新なデザインのハ ガキを作って何枚も印刷することが出来る。 それに、遠くにいても、メールで、文章のやりとりが出来る。一昔前じゃあ、葉書に手で何枚も書かなくてはいけない。やはり、 生活には新しい便利なものが必要さ。」 「それじゃあ、聞くけどね、人は、食べ物がないと生きていけない。食べ物が、新しいものなのかい。昔からずーと、変わらないじ ゃあないか。」 「変わらないけど、コンビ二でお腹が減ったと思うとすぐに食べられるよ。それに、インターネットを使えば家に居ながらにして、 産地の物を買うことが出来る。スーパーなんて行かなくてもいい。これぞ、年寄りなんかにいいと思うよ。」 「そうかな。」 「そうさ。」 「じゃあ、年をとっていたほうがいいじゃあないか。若い人よりも。」 「だから、その、新しいものを覚える気力がないんだって。」 「そんなのは、若い人にやってもらえばいい事じゃあないのかな。」 「うーむ。」 「おいらはね、食べ物は、作ってもらうより作り方を知っているほうがいいと思うんだよ。 それも、素材からね。もし、災害が起きて、電気もガスも使えなくなったとする。 そうすると、まずは、火を起こし、道端で拾った普段雑草としか思えないようなものを 調達して、食べるんだ。そういうことを知っていた方が得だよ。」 「それは、そうだが、年をとっていなくっても、若い人だって知識があればそんなことはできるよ。それに、そういう状況だと、年 寄りは体に負担が大きすぎる。」 「そうだが、若い人より、そういう状況での臨機応変な対応の仕方を経験としてしっているんじゃあないかな。」 「そうかもしれない。じゃあ、体力があって、経験豊かな年代が一番良いんだ。」 「そういうことになるかな?」 「体力があるのと、無いのでは、全然違うよ。」 「でも、体力は若いからあるとは限らないし、無駄な体力は必要ないじゃあないか。」 「体力が、あるのと無いのは、どちらがいいかこの次考えよう。」 「それじゃあ、また。」 二人は手を上げて去って行った。
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