「いやー、久しぶり。」 「やー、久しぶり。明けましておめでとう。」 「やー、やー、おめでとうございました。」 「新年は明けてからもう八日も経てしまったね。」 「そうさ。僕なんて、君に会えなかったから寂しかったよ。何処に行っていたんだい。」 「おいらは、年越し蕎麦を食べてから去年のことをすっかり忘れて今年はいい年になるようにと少し旅に出ていたんだ。」 「へー、どこか遠くに行ったのかい。」 「いいや、遠くになんか行っていない。」 「何処に行ったんだい。」 「何処にも行っていない。」 「君は、変な事を言うね。さっき、旅に出たと言ったじゃあないか。」 「うん、言った。でも、何処にも行っていないんだ。僕が、旅に出たと言ったのは、誰とも会わずにひっそりと、新年を楽しんでい たんだ。」 「それは、旅に出たとは言えないんじゃあないかな。」 「おいらにとっては、旅だね。旅ってさ、自分の住んでいる所から離れて違う場所に行く事を言うんだろ。だから、おいらは自分 の普段の生活を一切やめて、何もしないで過ごしたんだ。そうすると、違う場所に行った気分になれたね。」 「何処にも行かないで旅に行った気分になるなんて君は単純だよ。」 「そうかい。でも、すこし、違う気分になれるよ。テレビを観ない。本も雑誌も新聞も見ない。食べ物はお腹が減ったら餅だけを 食べる。誰にも会わない。こういう生活は、時間がとても長く感じられたんだ。なんかさ、自分の部屋に居るのに違う部屋に居る みたいで、とても、充実したよ。」 「ふーん。僕も、君と同じような生活をしていたよ。ほとんど、何処にも行かないで、テレビを観ていたね。炬燵でみかんを食べ て、おせち料理を食べて、眠くなったら寝る。というような生活さ。僕も旅に出ていたようなものだね。君と同じさ。」 「そうかい。君は、普段の延長線上のような生活をしていたから、旅に出たとは言えないような気がするがね。」 「いいや、君と同じさ。」 「それで、君は、充実したのかい。」 「ああ、とても、でも、少し体がだるいよ。」 「それは、食べすぎだね。」 「そうだよ。すこし、運動をしなくてはね。」 「おいらは、とてもすっきりして、今年のやる気が出てきたね。」 「僕は、正月の生活が忘れられなくて何もやる気がでないよ。ずーと、正月ならいいのに。」 「君は怠け者さ。」 「そうかな。」 「そうさ。」 「でも、年賀状に目を通したし、初詣にも行ったよ。」 「そうかい、年賀状に目を通していたら変な文句の年賀状があって、女の人が目を通しましたかって、家に来たのかな?それと も、初詣に行って、ひっそりと佇む神社が薄っすらと光っていたのかな?」 「うん。なんで知っているんだい。」 「そういうことをおいらが年末に考えたからなんだ。」 「そうかい、君が考えた事が僕の夢になって現れたんだね、きっと。」 「なんだ、そういった事実はなかったのか。」 「うん、なかった。でも、年賀状を見た後、夢で見たし、初詣に行った夜、そういった夢をみたよ。」 「僕が、考えている事と君が考えている事は一緒なのかな。」 「それは、君がどこかで、話したからじゃあないのかい。」 「そうかな。もう、去年のことは忘れたよ。」 「今年の事だよ。」 「そうかい。」 「そうさ。」 「でも、君に、また出会えて良かったよ。今年もよろしくね。」 「うん。こちらこそよろしく。」
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