投資家

  花には全てのものを引き寄せる何かがある。何かって、それは、魅力さ。
  魅力的なものほど皆が集まる。
  皆が集まるほどの魅力ってなんだろう。
  香りであり、しぐさであり、色であり、そして、はかなさである。
  魅力的なものほど、はかないものである。
  そして、そのはかなさゆえに、人に何かを与えようとする。

  はかなさを、もちあわせた男だった。
  満面の笑みを浮かべたかと思うと、すぐにしおれ、両手を地面につき、肩で息をする。
  ノックアウトされたボクサーが立ち上がろうとしているかのように。
  「大丈夫かい」僕は、声をかけた。
  彼は、立ち上がり、笑顔をみせ、僕の肩に手をおき。
  「ああ、何でもないさ」と言った。
  肩に大きな力がかかり、彼は、僕の横で倒れた。
  僕は、「大丈夫か」と大声で言った。
  彼は、またも、両手を地面につき、肩で息をしていた。
  「救急車をよぼう」僕は携帯電話を持ちかけたとき、彼は僕の手を持ち、
  「家に連れていってくれ、そうすれば、治る」
  と、一枚の名詞を僕に渡した。
  名詞には、「投資家、羽山健二」と書かれ、住所が書いてあった。
  ここの、すぐ近くだった。
  僕は、その、住所を彼に肩を貸し、ゆっくり歩いていった。
  立派なマンションだった。
  エレベーターで、七階まであがり、外に出た。
  「何処だい、君の部屋は」
  僕が、聞くと、彼は、扉を指差した。
  「へえーエレベーターの目の前かい、便利だね」
  「ここしか扉がないんだよ」と彼はしゃがれた声で言った。

  「じゃあ、僕は、これで」
  ソファーに彼を座らせると僕は、帰ろうとした。
  僕は、彼女との待ち合わせがあったからである。
  でも、彼をこの部屋に入れるまで、彼女のことなど、すっかり忘れていた。
  「何か予定でもあるのかい」
  彼は言った。
  「ちょっと、待ち合わせがあるんだ」
  「彼女かい、ならば、ここに呼べよ、ここは、飲み物も、食べ物もあるし、映画だって、観る事が
  できる。すべて、独立した部屋があるんだ」
  そういうと彼は、携帯電話を掛けた。
  「やあ、君かい、今日ダブルデートをしようと思うんだけど、空いているかな」
  「そうか、今すぐ来てくれ、それと、えーと、」
  彼は、僕の方を向き、「彼女の名前は?」と聞いた。
  「さおり」
  と僕が答えると、「えーと、さおりっていう、あそこのコンビ二の近くで待っているさおりっていう
  女の子を連れてきてくれ」
  と言い電話を切った。
  「何で、わかるんだい」
  「えっ何が」
  「僕が、何処で待ち合わせをしているかっていう事を」
  「ああ、あそこは、待ち合わせに便利だからね、君が、あそこに居たっていうことは、あそこしか
  待ち合わせる場所がないんだよ」
  「でも、それにしたって、違う場所があるじゃあないかい、それに、君の彼女に連れてきてもらう
  って言っていたけど、他に、さおりっていう名前の女の子が待ち合わせているかもしれないし、
  僕のことを、話していないし、着いてくるかどうか分からない」
  彼は、微笑み「ああ、そのことなんだけど、僕が、電話した相手は、仕事仲間さ、彼女ではなくて
  ね、だから、状況をすぐに飲み込んで連れてくるから心配いらないよ」
  彼は言った。

  それから、僕達は、ダブルデートを彼の部屋で楽しんだ。
  彼は、少し話すと、苦しそうにうつむいたが、また、元に戻り楽しそうに話した
  「ねえ、僕はね、人の先を読むことができるんだ。占い師なんかよりも、的確だよ。だからね、何で
  もあたるんだ。これはね、超能力とかなんでもないんだ。分析力さ。あらゆる情報を一瞬のうちに
  読み取る。すると、答えがみえてくる。それは、ほんの僅かな事を見逃さない力さ」
  僕は、彼の話にひき込まれていた。
  「ねえ、君は、あらゆる可能性をもっているんだ。もったいないよ。だから、ここに呼んだのさ。別に
  ここまで連れてきた恩義で君と遊んでいるんじゃあないんだ、君に投資したのさ」
  彼は、そう言った。
  
  僕は、それから、彼の部屋によく行くようになった。
  「なあ、彼女とは、別れたほうがいいんじゃあないかな。君は彼女といると、彼女に気を遣いすぎて
  うまくいかないんだ」
  「いや、それは、できないよ」
  「そうか、それは、残念だ」
  そういうと、彼は、電話をかけ、「ここの部屋を一億で売ってくれ、そして、前、言っていた、部屋を
  3000万で買ってくれ」と電話を切った。
  「これで、君とは最後になりそうだね。でも、君とは、いいライバルでやっていけそうだよ」
  と言った。 
  
  華やかな世界にいる。彼は、僕に満面の笑みと、読み取る力を与えてくれた。
  僕が、今居る部屋は、彼と最初に会った時に居た部屋だ。
  5000万だよ買ったのは。
  彼が、一億で売って、僕が、5000万で買った。
  これは、彼からの贈り物さ。
  彼は、今では、いないよ。
  これで、最後になるって言ったきり、何処かへ行ってしまったんだ。
  さとみとは別れたよ、彼のいうとうりだった。
  だけど、違う事があるんだ、彼女は、僕の妻になったのさ。
  彼女と別れて、結婚したんだ。
  結婚と、付き合っているのとではわけが違うからね。
  「やあ、あそこの、コンビ二に居る二人を連れてきてくれ
  僕は、電話を切りさとみに言った。
  「これから、ダブルデートさ」
  

        

  
  
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