2−1.遮られた光




それまでの僕は暗い洞窟の中にいたんだ。
日の光はもちろん入ってこない。
でも、水を飲む場所はあったよ。
コケを伝って、ぽちぽち、水滴が落ちていたんだ。
それも、そこら辺に、だから、水分は満たされていた。
喉の渇きなんて心配することはなかったよ。
洞窟のなかで長いこと暮らした。
普通、洞窟なんかで暮らせないよね。コウモリじゃああるまいし。
でも僕は、暮らしたんだ。これは、誇れるよ。誇っても仕方ないんだけどね。
何故、洞窟なんかに暮らしたかっていうと、それは、僕が小学六年生の時だから、まだ十二歳のときだね。
学校帰りに、蛙が道端にじっとしているのを見たんだ。
喉を動かし、目は何処を見ているのか分からない。色は白かったよ。
僕はしゃがみこみ蛙を凝視したんだ。蛙と同じようにじっと。
不思議な蛙だよ。
まず、白い蛙なんて見たことも聞いた事がない。蛇なら聞いた事があるけれどね。
それに、大きさがこれまた大きいんだ、僕が背負っていたランドセルと同じくらいの大きさがあったね。
多分突然変異かなんかで生まれた蛙さ。
どの位その蛙を見ていたのかな、三十分か一時間か、よくは思い出せないけど、とにかく長い間、じっと蛙をみていたね。その
間、蛙はじっとしていたよ。
ただ、喉を規則的に動かしてね。
そのうちに僕は蛙を見ているのに飽きて蛙から目を離したんだ。
その時、蛙が突然鳴いたんだ「ギコ、ギコ、ギコ」ってね。
普通の蛙の鳴き声だったよ、この声は蛙でなければ出せない声だし、誰が聞いたって蛙だとわかる。
僕は、残念だったよ。期待を裏切られてね。こんな不思議な蛙だったら蛙らしからぬ声で鳴くべきじゃあないかな。
僕は、立ち上がり家へ帰ろうとしたんだ。
だが、蛙は何か訴えかけるように鳴いたんだ。
何度も。
目は潤んでいたように感じられたよ。お姫様が悪い魔女に魔法でもかけられて蛙の姿に変えさせられたんじゃあないかと思っ
たね


 



トップ水滴を求めて1.台地において2.遮られた光   




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