2.−5遮られた光

「蛙が、タバコを食べるのですか」
僕は、思わず聞いてしまったんだ。だって、蛙がタバコを食べるなんて聞いた事もない。もし、食べたとしても、火がついている
物は食べないだろう。火傷してしまうよ。それに、蛙は、両生類だろ、水がないと生きられないんだ.。火と水っていったら、正反
対の関係にあるじゃあないか。
「そうだ」
男は、それだけ、言っただけだよ、何か、もっと、付け加えてもいいのにと思うんだけどね。
当たり前のように、言ったんだ。僕は男に、もっと、別な話を期待していたのに。
「ギコ、ギコ」
蛙は、鳴いたんだ。タバコを食べてしまったんだろう。なんか、満足そうな顔をしていたよ。
男は、蛙の頭を撫でたんだ。
すると、蛙は、気持ちよさそうに、目を閉じているんだ。
「この蛙は、君を探して、選んだんだよ、この蛙は、他の蛙と少し違う。何が違うかっていうのは、君が見たとおりだ。タバコが好
物で、体が白い。君は、突然変異かなんかで蛙がそうなったと思っているようだが」
男は、そこまで言うと咳払いををした。
咳払いをすると、黒くて見えない顔が赤くなったような気がしたんだ。
「おっと、失礼」
男は、そう言うとまた話しはじめた。
「この蛙は、洞窟から生まれた。世界中に無数の蛙の種類があるけれど、この蛙は、その種類の中の頂点なんだ。」
「頂点?」
僕は、聞き返したんだ。でも、男は僕の声が聞こえなかったかのように話すんだ。
「だから、普通の蛙より、大きいし、色々な能力を持っている。例えば、君が見た、火の着いたタバコを食べる。それに、人の言
っている事が分かる。それに、これは、大事な事なんだが、人を使う」
男は、そう言うと、タバコを取り出し、ジッポで火を点けタバコを蛙の目の前に持っていった。
蛙は、瞑っていた目を見開いた。
タバコは、無くなっていた。
また、蛙は、目を瞑った。
「何か、質問は?」
男は言った。
「いえ、ありません」
僕は、言った。
なんだか、変な話で、何を質問していいのか分からなかったんだ。
「じゃあ、君には、地下に行ってもらおう、この蛙が選んで、そうするようにしたんだ」
男は、そう言うと、手を二回叩いた。
叩いた、音は、部屋の中に反響した。すると、蛙が鳴いたんだ、「ギコギコ」ってね。
扉が開く音がしたんだ。すると、さっきの老人が扉から、顔をだしたんだ。
「お話は、終わりになりましたか」
老人が、澄ました声で言った。
「成立だ。さて、この、お坊ちゃまを、案内してくれ」
「かしこまりました」
「あの、ちょっと待って、僕は、帰っていいんでしょうか」
僕が、聞くと、二人とも、僕の言った事は無視したように
「さあ、お連れします。こちらへどうぞ」
「ああ、頼んだ」
と言ったんだ。




                                            


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